top of page
No.55 ホーリーバジルのウルソール酸とその異性体オレアノール酸は,
嗅球摘出マウスにおける抗認知症効果の要因である
iStock_-s-ホーリーバジル 1253676637.jpg

ホーリーバジル(シソ科Ocimum sanctum)は,透き通るような香りと味わい,またアダプトゲンハーブとしての効果への期待から,多くの人々に親しまれてきたハーブである.

 

今回紹介する研究は,認知症の動物モデルである嗅球摘出マウスを用いてホーリーバジルエタノール抽出物の抗認知症効果の原因となる生理活性成分を明らかにすることを目的とした.

ホーリーバジルまたはその抽出物をn-ヘキサン,エチルアセテート,n-ブタノールといった異なる有機溶媒を用いてさらに分画したものが,各々嗅球摘出マウスの空間認知障害にどのように影響を及ぼすのかを,Y字型迷路試験という行動実験を用いて検討した.また,ホーリーバジル抽出物各分画と比較するために,対照薬ドネペジルを用いて,どの分画の成分が最も活性が高いか検討した.
 

結果は以下の通りであった.

1)ホーリーバジル および そのエチルアセテート分画 の投与により,嗅球摘出マウスにて引き起こされる空間認知障害が緩和された.

2 )ヘキサン,ブタノール分画の投与では効果がなかった.
3)エチルアセテート分画 からは,2 つの主要成分であるウルソール酸とオレアノール酸,および 3 つの微量成分が分離された.

4)ウルソール酸 (6 および 12 mg/kg) とオレアノール酸(24 mg/kg) は,嗅球摘出によって引き起こされる認知障害を軽減した.
5)ウルソール酸 (6 mg/kg) とドネペジルは嗅球摘出によって引き起こされる海馬の血管内皮成長因子 (VEGF) およびコリンアセチルトランスフェラーゼ発現レベルのダウンレギュレーションを逆転させた.
6)ウルソール酸は,ドネペジルと同様の効果で,アセチルコリンエステラーゼの ex vivo 活性を阻害した.
7)ウルソール酸はアセチルコリンエステラーゼの in vitro 活性を阻害したが (IC50 = 106.5μM),ホーリーバジル,エチルアセテート分画,およびその他の単離化合物の効果は無視できるほどであった.

これらの結果から,ホーリーバジル抽出物の抗認知症作用の要因となるフィトケミカルとしては,ウルソール酸とオレアノール酸が大きく関与していることが明らかとなる一方,ウルソール酸は異性体のオレアノール酸よりも強力な抗認知症効果を有することが示唆された.ウルソール酸の効果は,少なくとも部分的には,中枢コリン作動系の機能と VEGF タンパク質発現の正常化によって媒介されていることが示唆させた.

薬草としても,また料理の薬味としても人気のホーリーバジルにより,健やかな認知機能を保つことができることへの期待は大きい.

〔参考文献〕Nguyen HT et.al., Ursolic acid and its isomer oleanolic acid are responsible for the anti-dementia effects of Ocimum sanctum in olfactory bulbectomized mice. J Nat Med. 2022 Jun;76(3):621-633. doi: 10.1007/s11418-022-01609-2. Epub 2022 Feb 26.

bottom of page