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Greeting ご挨拶

私が日本のハーブに関心を持ち,調査を始めたのにはきっかけがありました。十何年か前の夏に,米国のイエローストーンを訪れたときのことです。赤い花,黄色い花,紫の花・・。山の麓の草原には短い夏を謳歌するように色とりどりの花が咲き並び,その様はまるでお花畑のようでした。ひとつひとつ花を観て,そして図鑑で調べてみると,そのすべてがネイティブアメリカンの伝承してきたハーブだったのです。

 

自然は大いなる力を持った神そのものであり,自然のなかに身を置くことは自らの故郷に抱かれること・・。自然の掟に対する畏敬の念を持ちながら,あるときは姿勢を正し,あるときは安らぎ,そんな思いを持っているであろうネイティブアメリカンの世界観は,自然の織りなす風景の中に八百万の神をみる,日本人の世界観,文化と根っこは同じであると思いました。そして,ネイティブアメリカンのハーブを調べるのと同時に私は日本のハーブのことをもっと知りたいと思うようになりました。

 

日本の四季とともに,静かに,そしてダイナミックに姿を変えていく植物は,私たちに生きているとはどういうことか教えてくれます。実際に手で触れて,色や形を眺め,香りを嗅いで味わうことができる日本の植物は,同じ土に立ち,同じ空気を吸っている生き物同士であることを知らしめてくれ,大きな力をもった友達が近くにいることを教えてくれます。日本に暮らす人々が植物と本気で向き合い,築いていった信頼感に満ち溢れた関係から,正しい日本のハーバリズムが生まれ育ったのだと思います。

 

先人たちが拓いた日本のハーバリズムには,人の知恵,人の力に基づき,これまでに培われてきた経験による確かさがあります。現代に生きる私たちには,それを繋ぎ,育て,そして,今の私たちの力と知恵をしっかりつかって新しいものを生み出し創っていくことが大切です。

 

私たちはハイテンポな毎日のなかで,植物,自然としっかりとつながる時間を失いがち,実感するからこそ生まれる,本当の理解をしにくくなってきています。このまま離れ離れになってしまうのなら,本来の人の力はどんどん衰え,やがて訪れるのは暗い未来でしょう。

 

実感のない理解はあり得ない・・。真剣に向き合ったからこそ初めて見せてくれる本当の姿を受けとめることはどんなに私たちの糧になるでしょうか。言葉にならない香りの奥ゆかしさ、味やテクスチャのきめ細やかさ、大胆に語りかけてくる植物たちの力は紛れもなく私たちの力を喚起してくれるものだと思います。そしてそれは人と植物のおつきあいの礼儀を正してくれるものでもあります。

 

私たち同様に日本の地に身をおく日本の植物たちは身近なところで生き様を見せてくれています。生命の宿った,形あるプロダクツは私たちに喜びに満ちた実感と理解を届けてくれる・・。そう思いながら、日本の植物のハーブとしての力を活かすプロダクツを「JapanTrad ジャパントラッド」と名付け、お届けしたいと思います。

2017年12月27日

ヴィヴォの家にて

村上志緒

 

 

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