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トウゴマ(トウダイグサ科Ricinus communis 唐胡麻)は,ヒマ(蓖麻)ともいわれ、その種子である蓖麻子の圧搾油はヒマシ油(caster oil)として知られ,下剤や潤滑油として用いられ,自然療法でも活用されてきた。秋の頃に,赤い茎葉を天に向かってまっすぐ伸ばす姿は美しく,赤のなかから出てくるようなクリーム色の花を咲かせ,そしてそれらが実りを迎えると,種子は赤い棘のような毛で覆われた実の中にできあがる。

今回紹介する研究では、トウゴマについて,義歯のバイオフィルム除去能力、カンジダ症の症状への影響,抗菌作用について次亜塩素酸ナトリウムとともに検討した。

義歯を装着している64名を被験者とし,無作為,二重盲検およびクロスオーバーによって行った。64名のうちカンジダ症である被験者は24名,カンジダ症ではない被験者が24名であった。

被験者は、1日3回の歯磨きと義歯を1日20分,それぞれ異なる溶液に7日間浸すことを指示された。異なる溶液とは,S1:0.25%次亜塩素酸ナトリウム溶液, S2:0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液,S3:10%トウゴマ溶液,S4:生理食塩水であった。ある溶液に浸したあと別の溶液に浸す時には7日間のウォッシュアウト期間(洗い流す)を経ることとした。そして上顎義歯の内面のバイオフィルムの形成の様子を検討,カンジダ症の寛解および抗菌活性を調べた。

その結果,義歯上顎内側でのバイオフィルムの形成は,全ての溶液でコントロール(S4)より効果的であり,次亜塩素酸ナトリウムの溶液(S1,S2)の方が,10%トウゴマ溶液(S3)より効果は大きかった。カンジダ症の寛解については10%トウゴマ溶液(S3)が最も有効であった。 抗菌作用に関しては、2種の次亜塩素酸ナトリウムの濃度(S1,S2)において最もバクテリアが増えず,続いて10%トウゴマ溶液(S3)となった。これらより,10%トウゴマ溶液および0.25%次亜塩素酸ナトリウム溶液は、カンジダ症の寛解を引き起こし、義歯のバイオフィルム除去に有効であった。

ヒマシ油にはリシノール酸という脂肪酸が多く含まれている。リシノール酸は水酸基(-OH)を1つ持つ構造であることが特徴,これにより,界面活性の作用を有するであろうことは,微生物の体内に浸透していくことに関係があるとも考えられる。

また,特徴成分であるリシンは毒性を有することが知られている。薬用としては,瀉下,緩下,抗炎症,鎮痛,創傷治癒,保湿といった作用を示し,活用されてきた植物だが,今回の研究では,トウゴマが義歯の洗浄やカンジダ症の症状改善に有効であることがわかり,さらに生活のなかで活かす場面が増えることが期待される。

〔今回の注目論文〕Badaró MM, Salles MM, Leite VMF, Arruda CNF, Oliveira VC, Nascimento CD, Souza RF, Paranhos HFO, Silva-Lovato CH. Clinical trial for evaluation of Ricinus communis and sodium hypochlorite as denture cleanser.J Appl Oral Sci. 2017;25(3):324-334.

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