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ヒバは,アスナロと呼ばれているものの一つ,一属一種で,日本原産の常緑針葉樹で北海道から本州,九州の山地に分布している。アスナロのうち,北方でも生育できるものが,ヒバ,ヒノキアスナロとも名付けられており,日本の林業を支える重要な樹木の一つ,青森ヒバは,木曽ヒノキ,秋田スギと並び,日本三大林とされているのだ。1112年に岩手県平泉に建立された中尊寺金色堂は青森ヒバを用いており,木造建築としては非常にながく保たれており,青森ヒバの抗菌作用がその秘訣と考えられている。

ヒバの木部由来のいくつかの単離された化合物が,アレルギー反応を誘発する抗原誘発肥満細胞の脱顆粒,およびインターロイキン-4(IL-4)分泌に対してどのようにする阻害作用をもつか検討した。併せて,アレルゲンと結合する免疫グロブリンE(IgE)感受性RBL-2H3細胞においてIL-4 mRNAおよびタンパク質の発現にどのように関与するか調べた。

 (-) - elema-1,3,11(13)-trien-12-olおよびツヨプセンは,β-ヘキソサミニダーゼの放出によって測定された肥満細胞脱顆粒に対する強力な阻害活性を示し, IC値はそれぞれ27.4μMおよび25.1μMであった。これらの化合物はまた,IL-4の放出(それぞれIC値7.0,6.7μM),IL-4 mRNA発現(それぞれIC値16.5,7.2μM)およびIL-4タンパク質発現(IC値17.0, 9.6μM)を,抗原誘発IgE感作RBL-2H3細胞中で阻害した。

 これらの結果から,(-) - elema-1,3,11(13)-trien-12-olおよびツヨプセンは,肥満細胞脱顆粒ならびにIL-4産生を効果的に阻害することが示唆され,ヒバは,IgE媒介アレルギー疾患の発症予防や症状改善に有用であることが示唆された。

この論文では,このヒバに,アレルギー発症の抑制やアレルギー症状の緩和の効果が示唆された。青森ヒバの精油を蒸気吸入するなどし,鼻や喉などの口腔内に当てるなどして,ヒバの効能を身をもって味わうことができたら理解が深まるだろう。

 

〔参考文献〕Kim CH, Lee T, Oh I, Nam KW, Kim KH, Oh KB, Shin J, Mar W. Mast cell stabilizing effect of (-)-Elema-1,3,11(13)-trien-12-ol and thujopsene from Thujopsis dolabrata is mediated by down-regulation of interleukin-4 secretion in antigen-induced RBL-2H3 cells. Biol Pharm Bull. 2013;36(3):339-45.

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