植物療法 研究トピックス
いくつかの伝統的な治療法では、カンファー(クスノキやローズマリーなどの植物に含有される二環性モノテルペンケトンの一種、樟脳)は、性的行動や性ホルモンの抑制因子であると主張されている。
今回ピックアップした論文では、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)及びテストステロンのような性ホルモンに対してカンファーがどのように影響するかについて検討している。
カンファーという芳香成分は、例えばローズマリー(シソ科 Rosmarinus officinalis)や、クスノキ(クスノキ科 Cinamomum camphora)などに含油される、ツンとした尖った香りのするモノテルペンケトン。この特徴的な香りをもつ成分を含む精油や結晶は、防虫、抗菌作用の他、血行促進作用や鎮痛作用、抗炎症作用などがあり、古くから薬用として用いられてきた。特に、強壮刺激剤として用いられるカンフル剤と呼ばれる医薬品の原料として応用されていた。
この実験では、56匹の雄ラットを対照群( n=12)を含む5群に分けている。プラセボ群(n =11)と3つの異なる用量での樟脳群(各n=11)であり、プラセボ群は、30日間、基剤である(エタノール10%)の腹腔内注射(IP)を毎日受けた。 3つの樟脳群は、30日間、樟脳(1、2および5mg / kg)のIP注射を毎日受け、対照群は何もされなかった。そしてそれらのラットの血液を採取し、血清のLH、FSH及びテストステロンのレベルを測定した。
対照群(p<0.05)と比較して、LHのレベルは、すべての用量の樟脳群で有意に増加した。またFSHについては用量2および5mgの樟脳群が、対照群と比較して低減した(p<0.05)。テストステロンのレベルでは有意差は見られなかった。
これらの結果より、カンファーはテストステロンのレベルには影響しなかったが、FSHのレベルを減少させ、LHのレベルを増加させた。今回の研究で得た結果からは、性行為についてのカンファーの阻害効果の有無は検証できなかったが、性ホルモンに影響があることは確認された。今後どのように影響があるのか、さらに詳細な研究が必要であり、このカンファーを含む精油の活用法について検討するための一つとなることが考えられる。
〔参考文献〕Shahabi S, Jorsaraei SG, Akbar Moghadamnia A, Barghi E, Zabihi E, Golsorkhtabar Amiri M, Maliji G, Sohan Faraji , Abdi Boora M, Ghazinejad N, Shamsai H.The effect of camphor on sex hormones levels in rats. Cell J. 2014 Summer;16(2):231-234.