植物療法 研究トピックス
No.37 ハマナス花由来の揮発成分やポリフェノールの持つ抗酸化,抗菌、
そして美白につながるチロシナーゼ阻害活性
日本の薔薇、ハマナスは、心地よい香りを漂わせ、そして美しい姿で私たちを喜ばせてくれる。
日本では北海道に多く分布するハマナス,南限は,太平洋側は茨城県,日本海側は鳥取県までであり,鳥取県西伯郡大山町はハマナスの名所としても有名な場所だ。また、生薬としても古くから用いられてきた植物でもある。
今回紹介する研究は,ハマナス花の細胞液について,その含有成分を分析,同定をし,さらに,その揮発性成分やポリフェノールについて、抗酸化、美白につながる酵素活性、そして抗菌と、いくつかの生理活性を調べたというものである。
方法は以下のとおり。
1)GC−MSにより,ハマナスのリナロール、フェニルエチルアルコール、シトロネロール、α-ビサボロールなどの揮発性成分が同定された。
2)ヒペロシド、ケンフェロール-3-O-ルチノシド、ルチン、ルテオリン,ならびにハマナスの総フラボノイド含有量は、HPLCおよびHPLC-MSによって決定された。
3)総ポリフェノール含有量は、Folin-Ciocalteu比色法(Folin法)により測定された。
4)抗酸化活性は、DPPHおよびABTSラジカル消去アッセイによって調べられた。
5)チロシナーゼ阻害活性は、分光光度法によって調べられた。
6)抗菌効果は、最小発育阻止濃度(MIC)と最小殺菌濃度(MBC)または最小殺菌濃度(MFC)によって調べられた。
結果は以下の通り。
1)揮発性成分の合計含有量は、約48.2±2.76 ng / mLであった。
3)総フェノール酸含有量および総フラボノイド含有量は、それぞれ0.31±0.01mg / mLおよび0.43±0.01mg / mLであった。
3)抗酸化活性を示す、DPPHアッセイでのIC50値は1120±42μg/ mL、ABTSラジカル消去活性のIC50値は1430±±42μg/ mLであった。
4)美白へ関連がわかっているチロシナーゼ阻害については、L-チロシン酸化を強く阻害し、IC50値は570±±21μg/ mLであった。
6)同定されたすべての化合物は広範囲の抗菌活性を示した。
7)フソバクテリウム属 Fusobacterium nucleatumは、MICが64 µg / mL、MBCが250 µg / mLのハマナスエキスに最も感受性が高かった。
これらの結果から,ハマナスは,フェニルエチルアルコール,リナロールを含み,ローズ様の芳香であり,抗酸化作用,抗菌作用,チロシナーゼ活性阻害作用をもつことが明らかになった。
チロシナーゼの活性化はメラニン色素の合成を誘引することが報告されており,これを阻害することで,メラニン合成が抑制され,美白の効果が期待できる。抗酸化作用もあり、スキンケアでの活用が期待できる。
なお、抗菌作用が強かったフソバクテリウム属 Fusobacterium nucleatumは大腸ガンとの関連性が研究されており、抗ガンについても更なる検討を期待したい。
〔参考文献〕Ren G et al. Determination of the volatile and polyphenol constituents and the antimicrobial, antioxidant, and tyrosinase inhibitory activities of the bioactive compounds from the by-product of Rosa rugosa Thunb.
BMC Complement Altern Med. 2018 Nov 20;18(1):307.