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No.39 ゴツコラは記憶を改善し,抗酸化におけるシグナル伝達を促進する
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ゴツコラ(セリ科ツボクサCentella Asiatica)は伝統的に用いられている薬草であり,認知機能を高める効果があるとして人気が高いハーブだ。

これまでにゴツコラ水抽出物が,高齢者アルツハイマー病モデルTg2576マウスと野生型マウスの認知機能を改善し,酸化ストレス応答転写因子NRF2制御の抗酸化応答を誘発することを報告されている。

 

今回紹介する論文では,ゴツコラ水抽出物の認知,記憶機能の改善効果について,マウスの行動への影響と抗酸化応答に関するメカニズムをさらに明らかにすることを目的としている。

 

実験は以下の方法で行われた。 

1)実験の対象は以下のマウスとした。

アルツハイマー病モデルマウス5XFAD(メスとオス)

野生型マウス(年齢:7.6 +/- 0.6か月)

2)ゴツコラは3週間投与した。

3)3週間後に障害物記憶と状況に応じた恐怖記憶についてテストした。

4)アルツハイマー病の発症や病態と関係があるとされるアミロイドβ沈着に対するゴツコラの影響およびニューロンの酸化ストレスとシナプス密度のマーカーは5週間の治療後に評価された。

5)ゴツコラの抗酸化活性は,酸化ストレス応答転写因子 Nrf2とNRF2により調節される抗酸化応答に関する遺伝子発現をみて評価した。

 

結果は、以下の通りであった。

1)ゴツコラによる記憶の改善は,性別,野生型/アルツハイマー病モデルのどちらにおいても確認された。

2)海馬と前頭前野のシナプス密度マーカーがわずかに増加した。

3)ゴツコラにより,海馬のNRF2やその他のNRF2の標的酵素(ヘムオキシゲナーゼ-1,NAD(P)Hキノンデヒドロゲナーゼ1,グルタミン酸-システインリガーゼ触媒サブユニット)が増加した。

4)ゴツコラにより,酸化ストレスの指標であるアミロイドβ蓄積に関連するSOD(活性酸素除去酵素)1の減少が5XFADマウスの海馬と皮質で観察された。

 

これらの結果から、ゴツコラは,酸化ストレスの減少につながり,ニューロンの健やかさ,認知の改善につながることが示唆された。

〔参考文献〕 DG. et al.,  Centella Asiatica Improves Memory and Promotes Antioxidative Signaling in 5XFAD Mice. Antioxidants (Basel). 2019 Dec 8;8(12). pii: E630.

※この他にも、ゴツコラについては、その含有成分であるマデカッソシドについて,記憶の改善に繋がるような、神経新生促進作用の報告があり、以下に紹介する。

ゴツコラのマデカッソシドによるラット海馬神経新生促進作用

ツボクサが含有する成分であるトリテルペノイドサポニンの一種マデカッソシドの有効性を検証した。 

増殖条件下で神経幹細胞に異なる濃度のマデカッソシドを添加したところ,5 μM 添加で生存率が増加する傾向にあった。しかし30 μM 添加時には生存率は減少した。分化条件下でマデカッソシドを添加し,3日間培養後に行った免疫染色の結果から,Tuj-1 陽性細胞数の全細胞数に対する割合が増加していた。

この結果からマデカッソシドは神経幹細胞からニューロンへの分化を促進させる効果があったことが示された。(橋本ら,島根大学,2015)

 

Tuj1:クラスIIIβチューブリンTUBB3(Tubulin beta III)

中枢神経系,末梢神経系のニューロン,および精巣で選択的に発現。ニューロン(神経細胞)のマーカーとして広く用いられている。

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