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植物療法  研究トピックス
No. 4 ラズベリーの果実エキスは関節炎でみられる症状を緩和する

初夏になると赤く瑞々しい果実をつけるラズベリー(ヨーロッパキイチゴ、バラ科 Rubus idaeus)は、フランス語ではフランボワーズと言われ、アイスクリームやヨーグルトに載り、美味しいデザートを彩ってくれ、その葉であるラズベリーリーフは出産準備のハーブティーとして人気がある。

今回とりあげる研究報告は、ラズベリーの葉ではなく、果実についてのものである。ラズベリーの果実エキスは抗炎症作用を有すると考えられる、色素成分であるアントシアニンや苦さを備えたエラグタンニンといったポリフェノールを含んでいる。

本研究では、このラズベリーの果実エキスを内服することによって軟骨を保護し、炎症を抑える効果が得られるか否かを、子ウシの鼻の外植培養細胞と関節炎のモデルラットを用いて検討、用いるラズベリーの果実エキスは20%のポリフェノールと5%のアントシアニン、9.25%のエラグタンニンを含んでいるものだ。

子ウシの鼻の外植培養細胞の実験では、まず、関節炎では、軟骨プロテオグリカンの分解 や2型コラーゲンの分解がみられることから、モデルをつくるために、10 ng/mL IL-1βで、プロテオグリカン及び2型コラーゲンを放出することを誘導した。これに、50 μg/mLのラズベリーの果実エキスを付与したところ、これらの分解率が低減することが確認された。

そして、ラットの実験ではラットは毎日30または120 mg/kg体重のラズベリーエキスを、免疫増強剤を投与後30日間服用したところ、高濃度のラズベリーエキスを服用したラットにおいて、症状が小さいことが確認され、更には組織の観察でも、炎症の抑制、軟骨や関節内の滲出物であるパンヌスの傷害の抑制が確認された。

これらの結果から、ラズベリーの果実エキスは、関節炎でみられるいくつかの症状を緩和することが確認された。

暑い夏には甘く瑞々しいラズベリー・・。プチプチした食感と、優しい赤色、バイタリティーあるお味が涼しさを持ってきてくれる。日本の山にもエビガライチゴ(R. phoenicolasius)というキイチゴの仲間がいる。これからが実りのときを迎えている夏、味わいながら健やかになる一口で、キイチゴとの新しいおつきあいが始まりそうだ。

【参考】Jean-Gilles D, Li L, Ma H, Yuan T, Chichester CO, Seeram NP. Anti-inflammatory Effects of Polyphenolic-Enriched Red Raspberry Extract in an Antigen-Induced Arthritis Rat Model. J Agric Food Chem. 2011 Dec 1. [Epub ahead of print]

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