No.43 クラリセージの含有成分スクラレオールの,骨量減少抑制や
破骨細胞形成阻害のメカニズム
クラリセージ(シソ科Salvia Sclarea)の葉と花から抽出される精油は,包むような柔らかな香りをもち,リラックスや女性ならではの更年期の不調を改善するといったことからアロマテラピーでは人気の精油だ。また,骨粗鬆症は,骨量が低くなり,骨の質が損なわれることを特徴とする,閉経後の高齢女性が発症しやすい進行性の疾患である。
クラリセージの葉と花から抽出される精油は,免疫調節の作用と抗炎症作用を備え,更年期に見られる不調の改善に活用されてきた。この女性の不調にクラリセージが奏効する事は大いに期待される。
しかし,クラリセージの主な成分の一つであるスクラレオールが,破骨細胞の形成と機能,および骨粗鬆症にどのように作用するか,その効果の発現の仕組みについては不明なままである。
この論文では,クラリセージの主要成分であるスクラレオールの,破骨細胞形成と骨粗鬆症の進行に対する抑制効果について,培養細胞及び卵巣摘出ラットを用いて,in vitroとin vivoの両方について調べている。
破骨細胞を用いたIn vitroの系では,スクラレオールを付与し,以下について調べた。
・破骨細胞の形成がどのようになるか。
・NF-κBリガンド受容体活性化因子(RANKL)誘導性破骨細胞マーカー遺伝子の発現
・NF-κB の活性についての影響
・炎症に関与する酵素MAPK / ERK経路の活性についての影響
また,卵巣摘出により骨粗鬆症を誘発させたマウスを用いたin vivoの系では,スクラレオールを投与することによる影響を調べた。
その結果,以下のことが確認された。
1)スクラレオールを破骨細胞に付与するin vitroでの実験により,スクラレオールは破骨細胞の形成を阻害し,機能を抑制した。
2)NF-κBリガンドの受容体活性化因子(RANKL)誘導性破骨細胞マーカー遺伝子およびタンパク質の発現を抑制した。
3)RANKLによって誘導されるNF-κBおよびMAPK / ERK経路の活性化を阻害した。
4)卵巣摘出マウスにスクラレオールを投与するin vivoでの実験により,骨量減少を抑えて,保護する効果を発揮した。
これらの結果より,クラリセージの成分スクラレオールは,閉経後骨粗鬆症の症状改善に有効である可能性が示唆された。
〔参考文献〕Jin H et.al., Sclareol prevents ovariectomy-induced bone loss in vivo and inhibits osteoclastogenesis in vitro via suppressing NF-κB and MAPK/ERK signaling pathways. Food Funct. 2019 Oct 16;10(10):6556-6567.