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イランイラン(バンレイシ科Cananga odorata)は,熱帯,亜熱帯に自生する木本植物、大きく高く育つ。

甘い香りを放つイランイランは,緩和、高揚、催淫、血圧降下や認知機能の改善などといった効果効能が知られ,アロマテラピーでも人気のある精油である。

今回の研究では,イランイランのもつ向精神作用について,抗不安作用に注目し,抗不安薬の評価に用いられる行動試験によって作用を検証している。

イランイラン精油を吸入することにより,マウスの不安状態にどのような影響があるか・・。主要な活性成分の同定,3種の行動試験を用いての吸入による影響の観察,神経伝達系への作用メカニズムの検討という三点からみていった。

短時間及び長時間のイランイラン精油への曝露(吸入)後に, ICRマウスを対象に,オープンフィールド試験、高架式十字迷路試験,および明暗ボックス試験といった3つの不安評価の行動試験を行った。イランイラン精油の主要成分についてはGC / MSを用いて同定, 次いで主要成分を用いて,イランイラン同様に吸入し,行動試験を行った。さらに,短時間での曝露および高架式十字迷路試験の後、神経伝達物質およびそれらの代謝産物がどのようであるかを分析した。以下の結果を得た。

1)雄マウスにおいて顕著な抗不安作用を示し,性差があることが確認された。

2)短時間及び長時間のどちらにおいても,高架式十字迷路試験ではオープンアームに,明暗箱試験ではライトボックスに,侵入する回数,滞在時間が増加し,不安を低減した。

3)主要成分である安息香酸ベンジル、リナロールおよびベンジルアルコールは、雄マウスに対して各々に抗不安作用を示し,この作用の要因であることが示唆された。

4)イランイラン精油は雄マウスにおいて,線条体のドパミンを減少,海馬のセロトニン(5-HT)を増加させ,これらの系に関係があることが示唆された。

5)安息香酸ベンジルは、同様に神経伝達物質濃度を変化させた。 また海馬における5-HIAA / 5-HTの比率を減少させ,5-HTの代謝を抑制することが示唆された。

イランイランの吸入は,運動機能や意思決定に関する線条体でドパミンを減少させ,記憶や情動に関与する海馬のセロトニンを増加させることがわかり,この精油が神経系にどのように作用するか,そのメカニズムを知るための大きな結果を得たと言える。また,この作用には性差があることも特筆すべきことだ。

〔参照論文〕Zhang N, Zhang L, Feng L, Yao L. The anxiolytic effect of essential oil of Cananga odorata exposure on mice and determination of its major active constituents. Phytomedicine. 2016 15;23(14):1727-1734.

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