植物療法  研究トピックス
No.35 乾燥によるシソの葉の成分含有量の変化:抗がん作用の要因となる物質の増加

乾燥は,植物を材料とした食品の主要な加工法だが,シソ(シソ科Perilla frutescens 紫蘇)の新鮮な生葉と乾燥した葉に含まれる成分含有量の差異についてはこれまでほとんど注目されていない。

 

今回紹介する研究は,シソの含有成分について,乾燥することが含有量にどのように影響を与えるかを明らかにすることを目的に行ったものである。そして,葉のもつ抗がん作用の要因となる物質が乾燥によりどうなるかを検討した。

 

シソの葉は10苗を12週間栽培し,それぞれ8対の葉を持つまで成長させた。7対の本葉に葉の成長の最初(地面に近い方)から上に向けて番号を付け,各個体から4対の本葉(4〜7番目)を選択,それぞれの各対から生葉と乾燥葉の試料とした。

 

新鮮な葉は-80度で保管し,乾燥は18から23°Cの周囲温度で3週間,葉を暗下に広げることによって行った。生葉と乾燥葉について,シソの様々な効能の要因と考えられるペリルアルデヒド,ロスマリン酸,アピゲニン,ルテオリン,4-ヒドロキシフェニル乳酸,4-クマル酸といった6つの成分について定量分析し,その含有量の差異を検討した。さらに抗がん作用の要因と考えられるフラボノイドについて生葉と乾燥葉での差異を比較した。

 

その結果,乾燥葉は,生葉に比べて,アピゲニンは28倍の含有量(重量比)に,ルテオリンは86倍の含有量となった。一方,ロスマリン酸の含有量は減少,ペリルアルデヒドには大きな変化はなかった。

これらの結果から以下のことが確認された。

1)乾燥により含有量が変化するものとしないものがある。

2)精油に多く含有されるペリルアルデヒドの含有量は乾燥によりそれほど減少しない。

3)ロスマリン酸は生葉に多く含まれる。

4)抗がん作用の要因とされるフラボノイドは乾燥により含有量が高まる。

 

この論文でのテーマ植物シソ(紫蘇)は,葉も花穂も香り豊かなで古くから日本人に親しまれてきた植物である。紫蘇の「蘇」は「蘇る」という字であり,爽やかな香りが元気を蘇らせる植物という意味で付いたといわれている。新鮮な青紫蘇は刺身に添えられ,赤紫蘇は梅干しづくりにと食品として人気であるほか,夏に採取して乾燥させた葉(蘇葉)や,秋に採取して乾燥させた種子(蘇子)は,発汗,解熱,鎮咳,去痰,健胃,整腸,利尿,解毒,抗菌,去痰といった作用を持ち,風邪の初期症状や食欲不振,便秘などを改善するとされ,薬用植物として用いられてきた。

 

この研究では,シソの葉について,乾燥は,風味をあまり損なうことなくフラボノイド含有量を大幅に増加できる簡単で効果的な方法であり,より多くの摂取に役立つことが示唆された。そして,これは,これまでの食材や薬草としての活用につながる,興味深い結果といえるであろう。

〔参考文献〕Kagawa N, et.al., Drying the leaves of Perilla frutescens increases their content of anticancer nutraceuticals. Food Sci Nutr. 2019 Mar18;7(4):1494 -1501.