植物療法 研究トピックス
No.31 椿の花由来の物質、メラニン形成阻害及び繊維芽細胞増殖作用をもつ
〜ノルオレアナン型およびオレアナン型トリテルペンオリゴグリコシド〜
ツバキ(ツバキ科Camellia japonica)は学名が示すように,日本の花、椿として,その華やかな美しさから多くの日本人を魅了してきた。ツバキはその種子を圧搾して採取する椿油がヘアケアに、花部が健胃、抗炎症、止血や打撲のケアなどに用いられてきたという有用植物でもある。
この研究では,ツバキの花芽に注目し,その美白作用について調べている。ツバキの花芽からの抽出物が美容の効果を持つか否かについて調べるために,花芽から,トリテルペノイド化合物を単離し,その活性を検討した。
ツバキ花芽の50%エタノール抽出物からは,28-ノルオレアナン型トリテルペンオリゴグリコシド、カメリオシドE、オレアナン型トリテルペンオリゴグリコシド、カメリオシドF、ならびに既知の化合物のカメリオシドAおよびDを単離し,それらの化合物について,以下のことを確認した。
ツバキの花芽の主成分であるカメリオシドAおよびカメリオシドFは、テオフィリン刺激B16黒色腫4A5細胞におけるメラニン形成を有意に阻害,日本で栽培されているツバキの主成分であるカメリオシドBも同様にメラニン形成の強力な阻害を示し,この効果は、アルブチンよりも強いことがわかった。また,カメリオシドBおよびカメリオシドF のメラニン形成抑制効果について,悪性であるB16メラノーマ4A5細胞の増殖抑制効果に部分的に関連していることが示唆された。
一方,カメリオシドは、正常なヒト新生児皮膚線維芽細胞においては,その増殖を促進,カメリオシドBは線維芽細胞の増殖を大幅に加速することを確認した。
これらの生物学的特性は、カメリオシドBを皮膚の不調改善に活用できることを示唆している。このように調べた化合物はメラニン形成に対する阻害効果とともに,線維芽細胞増殖に対する増強効果も有することが確認された。
美容効果の活性中心となる成分として,トリテルペノイドサポニンである数種のカメリオシドついて,有効性を明らかにした。
例えば,ウコギ科のオタネニンジン (Panax ginseng) やエゾウコギ (Eleutherococcus senticosus)といった,環境からの刺激に対する適応性を増強するアダプトゲンハーブには,カメリオシドと同様に,トリテルペノイドがサポニン配糖体として含有している。
これらは,糖を外してアグリコン(トリテルペン)になることによって、細胞膜から入ることができ,多くのリガンドおよび補因子によるシグナル伝達に影響を与えることもわかってきた。
日本を代表する美しい花である椿・・。赤く華やかに色づく椿の花の新芽には,女性の美に根本的に関わることができるようだ。今後のメカニズム解明にも期待したい。