植物療法  研究トピックス
No.30カシア枝の水抽出エキスは,ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ活性を阻害することによって肺ガン細胞のアポトーシスを促進する

カシア(クスノキ科Cinnamomum cassia シナニッケイ)は,中国原産の常緑高木で中国南部やベトナム北部などで栽培されている。日本薬局方には,その樹皮または周皮の一部を除いたものがケイヒ(桂皮)として,また,葉,小枝,樹皮や同属のセイロンニッケイ(C. verum)の樹皮を水蒸気蒸留したものがケイヒ油として収載されている。日本でニッケイ(肉桂)と呼んでいるのは,享保年間(1716-35)に中国より渡来したC. sieboldii のことである。また自生種としてはヤブニッケイ(C. tenuifolium)がある。

生薬のケイヒは,発汗や解熱,鎮静・鎮痙を目的とした葛根湯などに配剤されており,抗ガン作用についての報告もされている。今回紹介する研究で用いられている,若く細い枝はケイシ(桂枝)といい,同じく薬用に使われるが,ケイヒより穏やかな薬効があるといわれてきたものである。

カシア(シナニッケイ)は,抗ガン作用があるとして広く報告されている。ガン細胞についてのアポトーシス促進作用の根底にある正確なメカニズムは依然として明確ではないが,ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDHK)の抑制による好気性解糖を抑制することは,抗ガンの有望な戦略と考えられる。この研究ではカシアの抗ガン作用がPDHK阻害によって媒介されるかどうかを調べた。

肺ガン細胞を対象として,カシア枝の水抽出物を付与することにより,細胞の生存率からアポトーシスの効果を検討し,細胞でのPDHKの活性がどのようになるかを検討した。

その結果,カシア抽出物は,数種の肺ガン細胞の生存率を低下させたが,正常な気管支上皮細胞に対する細胞傷害性を最小限に抑えた。また,PDHKの阻害活性によって乳酸産生を減少させるとともに,ミトコンドリア膜の安定性を損なう活性酸素産生を増加させたことから,活性酸素およびミトコンドリア依存性のアポトーシスを誘導したことが確認された。そして,カシアの成分のうち,桂皮酸はPDHK活性の要因となっていることがわかった。

これらより,カシア抽出物がPDHK活性を阻害することによって肺ガン細胞のアポトーシスを誘導することが確認され,シカシアおよび桂皮酸が解糖代謝を介して新規の抗ガン剤を開発する潜在的な候補であり得ることを示唆された。

今回の研究では,抗ガン作用について,肺ガン細胞を用いて研究された。ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼは,細胞が糖を分解することによりエネルギーを産生する系で働き,その活性が阻害されることが確認されたことは,この植物の持つ抗ガン作用のしくみの詳細が,今までよりさらに詳しく解明されたといえるだろう。

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